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ゲンさん奮闘記

【episode2】

「いやったー!! 大ちゃんナイッシュー!! 美咲さん見ましたっ? 今の大ちゃんのシュート!!」
「うんうん! やっぱ大樹君は動きが素早いよね~シュート殆ど外さないし!!」

 午前から引き続き、午後から始まったバスケ部の練習試合。
 最初こそ警戒されてしまったものの、ルイ君とお付き合いしていることを説明したからかすっかり心を許してくれた様子の明日香ちゃん。
 長いツインテールをぴょんぴょん跳ねさせながら必死に大樹君を応援している彼女の姿に、私は自然と笑顔になっていた。
 ……に、しても。

(どうしてこの2人は進展しないのかなぁ……?)

 試合前に聞いたルイ君と陽輔君の話によれば、大樹君と明日香ちゃんは母親が幼馴染で高校が別になった今でもしょっちゅう顔を合わせる間柄。なのにいまだに幼馴染以上恋人未満。いい加減面倒臭い。1回本人のケータイを使って告ってやろーかと思ったが未遂に終わった。なんかもうどうでもいい。
 ……うん。最後らへんはともかく、要するにアレだな。タッチのたっちゃんと南ちゃん的な。

「――ねぇねぇ、美咲さん?ちょっと聞きたいんですけど」
「っ! あ、な、何? 明日香ちゃんっ?」
「美咲さんたちって……どんな感じでコイビト同士になったんですか?」

 先程とは打って変わっての、控えめな口調。
 一瞬どきっと胸を鳴らした私は、パッと明日香ちゃんのほうに視線を向ける。しかしながら、彼女の視線はコート上の……背番号『4』を抱えた彼から外れることはなくて。
 少し照れたように笑って「突然なんですけど、ね?」と言葉を続けた横顔は、とても可愛らしかった。

「さっきも言いましたけど私、大ちゃんとはずっと一緒に育ったんですよ。もう本当に、物心付いた時から」
「……うん。15年間だもんね。長いよね~」
「それで……その。私、実は、大ちゃんのことが……す、好き、で。その、」

 ――うおおおお!!
 恥じらいながら顔を俯ける明日香ちゃんの姿に、思わず振るい付きたくなる欲求を全力で抑える。でも可愛いっ!可愛すぎるよ明日香ちゃん…!!
 そんな私の下らない心の葛藤を知らない明日香ちゃんは、そのままぷくっと頬を膨らませて不意に視線を上げる。
 視線の先には……向かい側のギャラリーから声援を送る、第一高の女子生徒たち。

「でも、その、ずっと幼馴染で、お兄さんみたいな感じだったから。私……そんな関係が居心地良くって。そしてた何だか、言い出す空気になかなかならなくて……」
「うんうん!」
「そしたら……いつの間にか大ちゃん、他のメス豚どもから告白されたりするようになっちゃって……」
「うんう――……んん?」

 あれ、可笑しいな。
 今ちょっと幻聴が。
 笑顔のままフリーズした私に構うことなく、「だからっ、美咲さんに聞きたいんですっ!!」と勢いよく振り返った明日香ちゃんは、そのままガシッ!! と私の両手を捕まえた。

「どうしたらっ、美咲さんと馬鹿犬のように、コイビト同士になれるのかを!!」
「ば、」
「お願いしますっ、美咲さん!!」

 瞬間、ぱぁっと花が咲くような笑顔を向けてくれる明日香ちゃん。
 ああ……天使だこの子は。
 正確には、敵と味方がはっきりしているエンジェルだ。
 きっとルイ君に関しては、大樹君の取り合いでお互い険悪そのものなのだろう。ルイ君は元々女の子自体嫌いだしね。容赦ないだろうしね。

「んん~……とは言ってもね。私とルイ君って、そもそも幼馴染じゃないしね~……参考になるかどうか」
「じゃあじゃあ! どっちから告白したんですかっ? どんなシチュエーションでっ!?」
「えっ? あ、と。確か、公園で……」
「公園! いいですね~ロマンチック! どっちかが呼び出したんですか?それとも偶然会ったとか……」

 それから十数分。明日香ちゃんの巧みな話術によっていつの間にやら洗いざらい話してしまった私。
 そして、これまたいつの間にか勝利を収めていた第一高校の点数を見留めたと同時に、「コラー! 美咲さんっ!!」という声と共に背中からぎゅうっと腕を回されてしまって。

「ル、ルイ君!?」
「まったくもーっ!! 美咲さん、途中から全然試合見てくれてなかったでしょー!?」
「あ、ご、ごめんなさい! ちょっと、明日香ちゃんとお話してて、」
「うっわ~相変わらず心狭っ。さすが座敷犬」
「……ざ?」

 はは。私ってば疲れてるのかなぁ~さっきから何だか妙にリアルな幻聴が……

「あーあー。アンタこそ相変わらずドクゼツですねぇ~。二重人格女」
「アンタと違って私は二重人格じゃないもーん。好き嫌いがハッキリしてるだけだもーん。つーかアンタなんてどうでもいいわ。大ちゃんはどこよ」
「は? そんなん自分で探せば?」
「は。使えない犬だこと」
「犬もヒトを選ぶし?」
「…………」

 ――――こええええぇえ!!
 半強制的に2人の間のポジションに置かれた私の身体。そして、バチバチと見るからに火花を散らす2人。
 成り行き上にしたって、この刺さるようなダブルの視線の狭間はキツイ。胃が痛くなってくる。
 キリキリキリキリ……ああ。誰かタスケテ。

「ゲンさんならさっき、知らない女の子に呼ばれて教室の方に行ったけど」
「よ……陽輔君!」
「――知らない、女?」

 一触即発。そんな空気の中、不意に投げ掛けられた陽輔君の重大事項に、明日香ちゃんはルイ君との小競り合いを中断すると、見るからに動揺し始めた。

「もぉ~陽輔っ! せっかく隠してたのに~そんな簡単に話しちゃ駄目じゃん!」とのルイ君からのブーイングを華麗に受け流した陽輔君は、首からかけたタオルでこめかみを軽く抑えながらその言葉を続ける。

「まぁ、この後どうせミーティングなんで長くはかからないと思いますけどね」
「ゲンさんってばキャプテンになってますます人気出てきてるらしいもんねぇ。今回はどうすんだろね?」
「最近のあの人は、お前と美咲さんにあてられて疲弊してたからな」
「美咲さんみたいにー、聞き分けの良い、優し~い彼女がいてくれたら、って?」
「ちょ……ふ、2人ともっ?」
「すみません美咲さんまたどこかでゆっくりお茶でもっ!!」
「へ!? あ、あすっ、」

 びゅん。それはまさに、星の速さ。
 名前を言い終える前に姿を消した明日香ちゃんに、私は茫然と立ち尽くしていたが、傍らから聞こえてきた2つの溜め息にその視線を向けた。

「……ワンパターンだな、このお膳立ても」
「え……え?」
「これで何回目? 陽輔ぇ…」
「立場逆も含めて8回目だ」

我ながら完璧な舞台設定

(……の、割りには何にも活かされてないんだけどねぇ……)
(不毛な努力だな)
(……2人とも、何か飲み物買ってあげようか?)