top / novel

Warning: Use of undefined constant display - assumed 'display' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/sumiresaku/soshiteasa.com/public_html/wp-content/themes/sango-theme-child/page-3.php on line 22
ゲンさん奮闘記

【episode3】

 コレは一体どうしたことでしょう。

「……」
「……」
「……」
「……え、え~っと……」

 ここはいつものバスターミナル直結のデパート内。
 めぼしい時間のバスが数十分待ちだと知って店舗に足を踏み入れた私は、入り口の目と鼻の先にあるフードコートで見かけた見慣れた3人に安易に声をかけてしまったわけだけど……

「……」
「……」
「……はぁ~……」
「ちょ、やっと口を開いたかと思えば大樹君溜め息だし! どうしたの3人ともっ、なんでそんなだんまり決め込んでるのっ?」

 話しかけてルイ君の隣に促されてふと気が付いた。3人の口数が異様に少ないことに。
 思わずつられた私も耐久戦とも放送事故ともとれる沈黙の時間を過ごした後、小さく耳を掠めた大樹君の溜め息にそれも限界に達してしまって。
 というか大樹君、暗ッ!! 影背負ってるよ、マンガなら確実に背中に斜線何本も背負ってるもん……!!

「いいんだよぉ美咲さん。こうなるとゲンさん、しばらくこっちに戻ってこないから」
「え。」
「それより美咲さんも何か注文はいいんですか? こんなゲンさんは放っておいて」
「……陽輔ぇ……」
「あ」「お」「わ!」
「“こんなゲンさん”とか……言っちゃ、め……っ」
「「「……」」」

 ――突っ込み弱ッ!!

 どうやら聞く限りでは、ルイ君と陽輔君の2人も大樹君の反応待ちだったらしい。
 それも今の力のまるで籠もらない子鹿の脚のような言葉の弱々しさに、彼等は一瞬視線を交わすととても疲れた表情を見せた。
 というか、あれ。この絵面いつだったか前にも見たこと有るような――このデジャヴは。

「え、と。お2人とも、もしかして大樹君のこの様子は……」
「うん。シカトされたんだって」
「へ。シカト?」

「ゲンさんがね、例の愛しの幼なじみに」
 あ、やっぱり明日香ちゃん関係なのね。
 いい加減この沈黙にも飽きてしまったのか、ルイ君は目の前に置かれているフライドポテトLサイズに指を伸ばしながらそう告げる。
 そしてぱくりとポテトを口にくわえたまま、「だ~からあんな奴見切った方がいいって言ってんのにさぁ~」と溜め息混じりに続ける。こらこら、ポテトで大樹君の頭をツンツンしないの!

「もっと詳細を言いますと、昨日の帰りに見知らぬ男と2人で仲良さげに歩いてる幼なじみの姿を発見して思わず身を隠そうとするも時々面倒を見てる近所の子供らに『大チャン何してるのーかくれんぼ?』といった流れで指摘を受けゲンさんの方を振り返った幼なじみ及びその男にひとまず何食わぬ顔をして話かけるもものの5秒で幼なじみはその男の腕を取ってダッシュで逃げ帰ったという話です」

「見知らぬ、男?」
「陽輔きゅん……息継ぎなしの分かり易い解説をアリガト……」

 目の前でぐったりと頭を落としていた大樹君は遺言を残すかのように穏やかでか細い声を零すと、再びテーブルに項垂れてしまって。
 ルイ君が先ほどのツンツンでうっかり残したままのポテトの欠片を取ってあげるのも躊躇われるくらいの落ち込みよう。
 ちょ……人の恋沙汰に立ち入るもんじゃないとはいえ、いくらなんでもこのままじゃ駄目でしょ。だって溜め息と同時に魂まで抜け出しそうな勢いだもの。
 何とかしなくちゃこれは……!!

「え、と。大樹君あの、」
「俺……いつの間にかアイツに嫌われてたんスかね……?」
「そ、そんなことある訳ないよ!!(だって前に明日香ちゃん言ってたし!!)」
「そうなんじゃない? 別に良いじゃん、あんな女!」
「嫌われているかどうかは兎も角、シカトされたのは純然たる事実ですけどね」

「あの男も……明日香と同じ制服着てて。同じ高校? クラスメート? もしかして付き合ってるとか……?」

「だからっ、そんな訳ないから!!(明日香ちゃんの好きな人は君なんだってば大樹君!!)」
「あ。東部高の制服って学ランだっけ? 俺中高ともブレザーだもんなぁ~1回着てみたかったかも」
「付き合っているかどうかは兎も角、シカトされたのは純然たる事実ですけどね」
「ちょ、ちょちょちょー!! 2人ともちょっと黙ろう! シャラップ!!」

「それじゃあ、私はここで。2人共気を付けて帰ってね」
「明日までには元気出しなよねぇ~ゲンさん!!」

 その後。結局3人で大樹君を慰めたりどやしたりで過ごしたフードコートを後にし、4人同じバスに乗っての帰宅となった。
 停留所に降り立つと反対方向の大樹君と陽輔君に元気良くブンブン手を振るルイ君。その呼びかけに、最初よりは大分顔色の良くなった大樹君が「はは、サンキュな。美咲さんもホント、有り難うございました!」と答えて陽輔君と一緒に背を向ける。
 そしてすぐに傍らを歩く陽輔君にも何か言われたのかばしっと背中を叩く仕草を見せるも、その表情はやっぱり……全快には到底及ばない、弱々しい笑顔に映って。
 話を聞く限りじゃ確かに、大樹君が落ち込むのはもっともとは思うのだけれど――

「私はやっぱり……明日香ちゃんと居たっていう男の子、絶対に彼氏とかじゃないと思うんだけどなぁ……」
「でもさ、折角ゲンさんが話しかけたのにそれを無視したんでしょお? なんかヤマシイ関係なんじゃないのー?」
「も~ルイ君ってば明日香ちゃんのことになると途端に厳しいんだから!」
「違いますー。俺じゃなくってアイツが厳しいんですぅー!」

 唇を尖らせてそう反論するルイ君に、私はクスリと小さく笑みを零す。それにつられるように柔らかな笑顔を浮かべてくれる彼に、私は心が温かくなるのを感じていた。
 ルイ君は、私と落ち合えた日には必ず私を家まで送ってくれる。
 普段なら私や大樹たちの1つ手前のバス停で降りるルイ君。つまり私を送るとなると、バス停1つ分乗り過ごすために+160円現金で払わなくてはいけなくなる訳で。
 それじゃあ通学定期を購入してる意味がない、代わりに私がルイ君のバス停で降りる等さんざん押し問答を繰り広げた結果、現在ルイ君は前もって私の降りる停留所にずらした定期券を買ってくれている。

『陽輔に教えてもらったんだ! 同じ料金の区間なら停留所を延長しても定期券の料金は変わらないんだって~!これで美咲さんも気に病むことないでしょっ?』
 もともとルイ君の住むマンションは両停留所の中間地点にあるため新規購入も問題なかったらしい。そう言って自信満々に新しい定期券を見せてきたルイ君の笑顔は……今思い返しても可愛くて。

「んん? どうしたの美咲さん?」
「え、あ、ううん! えと、明日香ちゃんに直接話を聞ければいいのにね、ってね。この前の試合の時、結局最後はバタバタしちゃって明日香ちゃんとアドレスとか交換できなかったしなぁ……」
「それこそゲンさんはアイツのメアドも電話番号も知ってる筈なんだけどね。あのヘコみっぷりを見る限りじゃ真相を確かめるのもまだまだ先になっちゃいそうだねぇ……」

「――美咲さん?」

「へ?」突如投げ掛けられた自分の名に背後を振り返ろうとするも、中途半端に向けた身体の横側に構わず腕を回されてしまう。

 長いツインテール、札幌駅方面には見慣れないセーラー服。この幼さの残る可愛らしい声は……

「あ、明日香ちゃんっ!?」
「美咲さ~ん……あ、会いたかったです、本気で会いたかったです! 是非っ、是非聞いてほしいことが……っ!」
「ちょ、ストップストップ!! 何どさくさに紛れて美咲さんに抱きついちゃってんの!?」
「昨日のことなんですけどねっ、大ちゃんが……大ちゃんってば……」
「人の話無視すんなぁ! ついでに存在も!!」
「ああああの、2人ともとりあえず落ち着いて…!!」

 左側から涙目で腕にすがりついてくる明日香ちゃんと、右側から頬を膨らませて首もとに両腕を巻き付けてくるルイ君。
 ななな、何なんだこのハーレム状態は~っ!?
 もしくは三角関係の図! いや、どちらも微妙に違うけど!!

見守るこっちがハラハラ

(大樹君の居ないところでどうしてこんな事態に、)
(しかもまさかの三つ巴…!!)