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ゲンさん奮闘記

【episode4】

 場所は移ってここは近所の恵みの公園。

「ったくもー。どうして美咲さんってばこんな奴の話なんて聞いてあげちゃうかなぁ~……」
「こんな奴って言わないの! ルイ君だって気にならない訳じゃないでしょ? これは大樹君の話でもあるんだからっ」
「というか別にアンタは要らないし。美咲さんを残してとっとと犬小屋に帰れば?」
「はあ? 折角美咲さんとゆっくりまったりご帰宅コースだったのをいきなり邪魔されてそのまますごすご帰れるかっつーの」
「こ――――ら!! 話が進まないから両者ここまで!!」

 ブランコの隣に設置されたベンチ。
 そこに腰を下ろしている私は隣に座る明日香ちゃんとブランコをギコギコ漕いでいるルイ君の火花散る険悪モードをとりあえず一蹴。これが続くと本当に日が暮れちゃい兼ねないからね!
 私の言葉にフンッ! とお互いそっぽを向く、この2人……見方によっては相当似たもの同士なのかもしれない。
 同族嫌悪? まぁルイ君はそもそも女の子そのものが嫌いなんだけど。

「え、と。それで。明日香ちゃん、昨日大樹君と何かあったんだ?」
「……美咲さん、」
「うん?」
「やっぱり大ちゃん……私のことなんて女としてこれっぽっちも見てないんですよぉ……」
「「…………」」

 そう言うなりしょんぼりと顔を俯ける明日香ちゃんに、私は目を丸くし、ルイ君はそれはそれは大きな溜め息を吐く。

 瞬間、ひとまず私はルイ君のその辛辣な態度に視線で(めっ!!)と伝えるもののルイ君は(だってぇ~……)とやる気のなさげな反応しか送ってもらえない。
 そりゃそうだ。だってついさっきまでもう一人の当事者の方から似たような相談を一心に受けていたのだから。

 一説によるとルイ君に至っては小学生の頃から。そりゃ溜め息のひとつやふたつ出てくるというものだ。
 だがしかし。目の前で今にも泣きそうな顔をしている明日香ちゃん。
 そのツインテールもいつもならぴょんぴょんとウサギの耳に様にはねているイメージなのに、今日は打って変わってしょんぼり下に垂れてしまっている。気がする。

 そんな可愛くて仕方ない彼女を捨て置けるはずもない。
 さあドンと来い明日香ちゃん。おねーさんはお話聞いちゃうよ!!

「昨日……昨日私、高校の部活の先輩と一緒にこの辺りを歩いてたんです。その人中学の頃この辺に住んでたらしくて、親戚の家に行く用事でたまたまバスが一緒になって……」

 はあ。なるほど。
 じゃあやっぱり昨日の“例の男”は単なる知り合い。Not彼氏。一緒に居たのは不可抗力だったわけですな。

「うんうん。それで?」
「そしたら偶然、帰宅途中の大ちゃんと鉢合わせしちゃったんですよ。そしたら大ちゃん、何て言ったと思います?」
「え、と?」
「普通に挨拶してきたんですよ! それはもう、普通~に!! 大ちゃん的ビジョンからいくと私は見知らぬ男と2人きりである居てたわけですよね、しかも夕日をバックに背負いながら!!」

 夕日をバックはどれだけの価値があるのかは置いておくとして。

 明日香ちゃん、違うよ。
 大樹君は平然を装っていたけれど多大なるショックを受けていたし、今日なんて本当に“返事がない。ただの屍のようだ。”状態だったんだよ……!!

「普通せめて“こいつ誰だよ?”みたいに問い詰めてくれてもいいじゃないですか。その場では駄目でもメールとかで!」
「う、た、確かに……」
「なのに、なのに……あんな場面に遭遇しても普通に、“おー。今帰りか?”って……」

 自分の言葉に自分で傷つく。
 まるで今の明日香ちゃんがそれのようで、次第に声色までが弱々しくなってきている。

「まるで何ともないみたいに、大ちゃん、笑ってて」
「あ、あの。それはね、明日香ちゃん、大樹君は……」
「やっぱり……大ちゃんにとって私は、単に手の掛かる近所の幼なじみでしか、ないんだなぁ……って」
「ッ、あ、と」

 ちょ、待て待て待て。これはマズい。非常にマズい。
 だってさっきまでの空っぽの勢いすら尽きてしまったように、目の前の明日香ちゃんの肩、ふるふる小さく震えてきてる。
 こ、これはどうすれば。私からもう大樹君のことを伝えてあげた方が良いのか?
 いやでも、それこそ余計なお世話になっちゃうかもしれないし……?
 私は焦るもそれを悟られないようにそっと、明日香ちゃんの頭を撫でようと手を差し伸べたが……

「――――明日香っ!!」

 公園一帯に響くような大きな声。
 聞き覚えのあるその声に、私も目の前の明日香ちゃんも目を丸くした。
 対照的にルイ君はというと「遅いよ~もぉ」と悪態をついてぎこぎこブランコを漕ぎ続けている。

「もしかしてこの後に及んでまた尻込みしてたんじゃないでしょーねー? 折角アイツと美咲さんの会話、電話で聞かせてあげたのにさぁ」
「な!」
「うえッ(マジですかルイ君!!)」
「違いますっ! 陽輔とコンビニ寄ってたから着信に出るのが遅れたんです!!」
「あーもーいいから。とっとと話付けて美咲さんを解放してよ。ゲンさん」

「じゃないと俺ら、いつ帰れるか分かんないからさぁ」そう続けて座っていたブランコから綺麗に弧を描いて飛び降りると、ルイ君は私の方へ真っ直ぐに向かいその腕を取った。

え? あれ? これは一体どういった事態に……?

「後は当事者に任せましょうってハナシ! ほらほら、美咲さんは俺とちょっと離れてよう!」
「あ、は、はい!」

 まるでいつもとは真逆のよう。
 ルイ君は手慣れたようにそのまま私の手を引いて行くと、そのまま公園の片隅に移動する。

 そして先ほどまでいたベンチ近くには、俯いたままの明日香ちゃんと全力疾走がたたって未だ多少息をあがっている大樹君が……2人ぽつんと残された。

 それにしてもルイ君、さっきから何も話さないと思ってたら大樹君に電話かけちゃってたのね。
 確かにあの会話を聞けば手っとり早く大樹君の誤解は解けるんだろうけども、荒療治だよね完全に!

「だ……大丈夫かな。あの2人」

 お互いどうにも切り出しがつかなくて口を噤んでいるけれど……あ。でもやっぱりお互い顔は赤くしてるな。うん。

「大丈夫。あの2人のこういうの、初めてじゃないから」
「へ。」
「舞台設定第9回目って訳か」
「のわぁっ!! よ、よ、陽輔く――……うぐっ」

 当然のように姿を見せてくれた陽輔君に奇声を上げた私だったが、それもルイ君の大きな手のひらに塞がれて。

「駄目だよ美咲さん。こういう時は2人きりの世界に旅立ってくれてた方が上手くいくんだから!」
「現実に戻ったが最後、再び出口の見えない苛つく恋愛相談が再開されますからね」

 密かにそう告げるルイ君と陽輔君に私はなるほどと言わんばかりに大きく頷いてみせた。
 というか陽輔君、今苛つくって言ったね。本音出てるよ本音。

「……」
「……」
「……え、えっとな。明日香」
「……なに」

 不貞腐れたように短く答える明日香ちゃんに、大樹君は苦笑を漏らす。なんやかんや喚いてはいるものの、やっぱり大樹君は年上で、大人だ。
 視線を素直に合わせられない。
 きっと彼がこの場に駆けつけてくれたことが嬉しくて仕方ないはずなのにそれが出来ない明日香ちゃんに、大樹君はすうっと小さく息を吸い込んだ。

「その、な。――嫌だったぞ、俺は」
「!」
「嫌だったし……気になった。明日香と同じ高校の奴でこんな時間に……どうして一緒に居るんだ、ってさ」
「――嘘つきっ!」
「嘘じゃないよ」

 私も驚くくらい落ち着いて返答する大樹君。
 そんな真摯な態度をとられたら、癇癪を起こす力も吸い取られてしまうというもので。

 明日香ちゃんはしばらく眉をぎゅっと寄せて地面に視線を落としていたが、「……本当に?」と弱々しく呟くとようやくその大きな瞳に大樹君を映した。

 ……ああああ。まずい。叫びたい。
 何なのこの可愛い子たち……!!!

「ちょ、大丈夫? 耐えられる美咲さんっ?」
「へ?」
「正念場はここからですよ」

 完全に2人の世界の空気に当てられた私は、勝手に祝福する天使のように花を舞わせラッパでも吹いてあげようかという思考にまで至っていた。
 そんな中で幾分か冷静に響いたのは、こんな場面では既にお約束と言った感じのお2人の声。
 見上げた先に映った彼らの視線はいつも通り半目のかなりやる気のないものではあったけれど。え。なに?
 耐える? 正念場?

「じゃあ、じゃあ何であの時そう言ってくれなかったの? そしたら私だって怒って逃げたりしなかったのにっ!」
「だ、って。あの場面でお前のことかっさらう訳にもいかねーだろ? それにやっぱ……俺だって傷付いたし、さ」
「……傷、付いたの?」
「ん」
「……どうして?」
「どうしてって……それは」
「私が、幼なじみだから?」
「いや、そ……それもある、けど」
「けど?」
「つまりだな。えっと……」
「やっぱり……私って所詮妹止まり。なの?」
「あのなぁー……妹って感情で済むならこんなにヤキモキしねぇって。人がどんだけ悩んだと思ってるんだ?」
「でもっ、私だってショックだったもん! 大ちゃん、全然いつも通り話しかけてきちゃうし。ちょっとくらい、顔色変えてくれたっていいじゃん! バカ!!」
「だから~、男には男のプライドってモンがあるの! そういうお前だってあの男の腕に抱きついてなかったか? ん?」
「腕を掴んだだけで身体は触れてないよ! 大ちゃんじゃない人にそんなことするはずないじゃん!」
「……変なトコロも当てたりしてないだろうな」
「大ちゃんの変態ー!!」

「「「……」」」

 無言の境地に至った私たち。
 そして隣にいた2人はそれぞれ自分の荷物を肩に担ぎ直していて。
 うん。そろそろ帰ろうか。

照れ屋もここまでくると病気

(I love youが溢れて溢れて溶け切れなくて沈殿するほどになっている会話だね……)
(顔あんだけ赤らめて痴話喧嘩しといて、結局進展はなさそうだしねぇ~)
(まぁ期待してなかったけどな)

 結論:好きって言えば、いいじゃない。

END

(C)確かに恋だった
・・・・・・・・・・・

大樹と幼馴染の明日香ちゃんのお話でした。
お題は「確かに恋だった」様より「キューピッドは語る5題」から。
ここまで足をお運び下さって有難うございました!

END